
ワインと映画
大きなスクリーンで見るハリウッドの超大作も良いですが、自宅のソファーでワインを飲みながら、ワインにまつわる映画を楽しむのも、ワイン愛好家ならではの贅沢な時間の過ごし方ではないでしょうか?
今回はそんなワインを飲みながら楽しみたい、ワインをテーマにしながらも、親子の絆、友情、そしてアメリカならではのフロンティアスピリットを描いた映画を紹介したいと思います。
ボトル・ドリーム
映画のタイトルは「ボトル・ドリーム」、1976年にパリで行われた、フランス、カリフォルニア、それぞれを代表する白ワイン10種と赤ワイン10種によるブラインド・テイスティング、いわゆるパリ・テイスティングをモチーフにした映画です。
それって...と思った方、正解です!ワイン史に残る大事件と言われ、カリフォルニアワインを世界に知らしめた出来事、並み居るボルドーのグランヴァンやブルゴーニュのグラン・クリュを凌ぎ、白ワインも赤ワインもカリフォルニアのワインが最高点を叩き出した、まさに時代の分岐点を描いています。
あのパリ・テイスティングがテーマ
このパリ・テイスティングはいくつもの書籍でも取り上げられていますが、どちらかというと赤ワインで最高点を獲得したスタッグス・リープに重きを置いた内容の物が多い気がしますが、この映画は白ワインで最高点を叩き出したシャトー・モンテリーナにスポットを当てた作品。
監督はランドール・ミラー、それなりの数の映画を監督されているのですが、日本でのロードショー公開はほとんど無いといった所が寂しい気もしますが、なんとこのボトル・ドリームもロードショー公開はされていなかったので、DVDでの日本初公開となりました。
シャトー・モンテリーナ
物語の主人公となる、シャトー・モンテリーナのオーナー、ジェームス・バレットの息子で、いまだヒッピーを気取るボー・バレット役には、新しいスター・トレック・シリーズでカーク館長を演じているクリス・パイン。
そして、このパリ・テイスティングの仕掛け人であり、アカデミー・デュ・ヴァンの創設者であるスティーヴン・スパリエ役をアラン・リックマンが演じています。アラン・リックマンと言えば、ハリーポッター・シリーズのレギュラー、スネイプ役が印象深いですが、実はダイ・ハード・シリーズの一作目にハンス・グルーバーという大ボス役で出演しています。スーツをビシッと着こなす英国紳士的な役どころはこちらの方が遥かに近い印象ですね。
ストーリー
そんな俳優陣が中心になりながら進んでいく物語は、ナパの広大なブドウ畑を舞台に、ワインに魅せられた多くの人たちの人生も描かれていて、ワインを題材にした映画でありながらも、単にカリフォルニアで良いワインが出来た的な脳天気な映画では無く、放蕩息子ながらも父を思う息子の姿と、権威を前にしながらも世界を見据え道を切り開こうとする一人のワイン商の姿とを描いた、ヒューマンドラマとしての一面も強く印象に残ります。そしてエンディングに向けてシャトー・モンテリーナを襲う悲劇、そして遥かフランスで栄光を掴むグランド・フィナーレへと話は進んでいきます。
Bottle shock
ちなみに邦題はボトル・ドリームですが原題は「ボトル・ショック(Bottle Shock)」。
通常ボトル・ショックと言えば、移動などによる振動でワインが味わいのバランスが壊れてしまう事をいう場合が多いのですが、この映画の内容的には終盤に起こる白ワインの褐変化の事を意味しているのかと思います。ですが、当時のフランスとカリフォルニアのワイン産業の状況、そしてこのパリ・テイスティングによって起きる新しい潮流を考えると、「一本のボトルがワイン史に与えた大きな衝撃」という意味の方がしっくりと感じるのは私だけでしょうか?
映画を観ながらのワイン会
実は先日、私のワインセミナーに通われている受講生の皆さんと、実際にこの映画を鑑賞しながらのワイン会を開催しました。時代背景、専門用語等の解説を所々で私がいれながら、エンディング近くでは実際にシャトー・モンテリーナとブルゴーニュのプルミエ・クリュを試して頂き、ヴァーチャルなパリ・テイスティングも体験して頂きました。どちらが高評価だったかは皆様のご想像にお任せいたします。
個人的にはワインに点数をつけるのは嫌いな性分なのですが、シャルドネという同じ品種を使っても異なった味わいとなる、そこにある生産地の違いや、ワインに求める文化の違いを感じて頂きたくて、このような比較テイスティングをしてみた次第です。
映画とワインの楽しみ方
実際にこの作品を見られる際、同じ価格帯のブルゴーニュとカリフォルニアを比べてみるのも楽しいかもしれませんね。ひょっとしたら、シャトー・モンテリーナが最高点を獲得したその理由を体験できるかもしれません。
単に映画を見るより、単にワインを飲むより、一緒に楽しんだほうが何倍も楽しい。そんな映画を今後も紹介させて頂きます。