大分県のワイナリー「安心院葡萄酒工房」

先日、新酒祭りでにぎわう大分県は安心院葡萄酒工房へお邪魔しました。

 

安心院は大分県の国東半島の付け根を少し内陸に入ったところで、北東に瀬戸内海の周防灘、南東に別府湾があります。

福岡の感覚では海から近いと寒そうですが、そこは瀬戸内海。

海からの冷たい風は入ってきません。

夏暑く、冬には雪が積もる日もあるそう。夏と冬の寒暖差の大きな場所です

 

安心院葡萄酒工房の本体は麦焼酎でおなじみの「いいちこ」を有する三和酒類株式会社

ですが、実はワインのほうが焼酎より歴史が古く、昭和40年代に安心院町の農地整備によりマスカットベリーA、デラウェア、キャンベルアーリー等を植えたことがきっかけとなり、ワインの製造が始まったとのこと。

そこから様々な段組を経て、現在の設備の充実や交配品種の開発、商品の多様化、本格的な辛口ワイン作りへ発展し、今に至ります。

 

ワイナリーは緑豊かな丘の上にありました。

安心院

すっぽんの養殖で有名な場所が近くにあり、併設のレストランではすっぽんをいただくこ

ともできるそうですが、木立が美しいマイナスイオンたっぷりの中庭にお弁当を広げるの

も楽しそう。

訪問した日も新酒祭りということで、ジャズライブが開かれ、様々なお料理のテイクアウ

トショップが並んで、お客様でにぎわっていました。

ピクニック

 

さて

安心院ワインの一部をご紹介させていただきます。

安心院葡萄酒工房では広大な自社畑を中心に安心院で育った葡萄からワインをつくること

にこだわっていらっしゃるため、全て安心院産です。

特に有名なのが安心院スパークリングワインでしょう。

安心院産のシャルドネを瓶内二次発酵させた本格的なシャンパーニュ方式のこのスパーク

リングワインはすでに多くのファンを持ち、福岡でも多くのレストランでグラス販売され

ています。

口の中にするっと馴染む繊細な泡立ちと、洋ナシやリンゴなどのフルーツの香りや、トー

ストのような酵母の香りを爽やかな酸が支えている。非常にまとまりのある高品質のスパ

ークリングワインです。

このスパークリング。ずっとノンドサージュなのかな?と思いきや2009年からエクストラ

ブリュットにとどめる範囲でドサージュを行っているそうです。

ワイナリーでは2005年までは濁りスパークリングを作っていましたが、「辛口の本格的な

スパークリングをつくりたい」と試行錯誤をかさね、「これならいける!!」と満を持し

て出てきたのがこの安心院スパークリング。

当初は、きりっとした酸味を際立たせるためにノンドサージュでしたが、少し複雑味がほ

しい、コクがほしい・・・と、熟成した原酒を使ったり、いろいろやってみた上で、ドサ

ージュを少しだけ加える今のスタイルにたどり着いたとのこと。

オリとワインがふれあった状態で熟成の様子を見ているストックもあり。

この長期間熟成させたスパークリングワインがどのような変貌を遂げてリリースされるの

か・・・!?現在のスタイルを基準に今後別の発展もありそうな予感でますます将来が楽

しみです。

それと双璧をなすように有名なのが「イモリ谷」の区画からのシャルドネとメルロ。

「イモリ谷」名前から美味しそうだと思うのは私だけでしょうか?

これは独特の地形がイモリのような形を成す谷の丘の上の畑だそうで

他とは土壌の組成も違い、より香りが華やかに立ち上る葡萄が出来上がるのだとか。

イモリ谷のシャルドネは先にグレープフルーツやかぼす(大分なので・・・)などの柑橘

類の香りから、空気を含ませると熟したリンゴやパッションフルーツなど南国の甘いフル

ーツの余韻を残します。酸は穏やかですが、きちんと骨格を作っておりミネラルも豊かで

す。

イモリ谷

先日の九州ワインフェスタで「イモリ谷シャルドネ」に感激した私ですが

今回ワイナリーを訪問してさらに「シャルドネリザーブ」に出会いました。

目立つラベルの「イモリ谷」に隠れるようにひっそり佇むフラッグシップの「シャルドネ

リザーブ!!」控えめなところが素敵です・・・。

ラベルについては要らぬことをエノログ古屋さんにも申し上げ大変失礼いたしました

・・・。

ラベルは控えめなのに(しつこい)・・・なんと!このリザーブ。

シャルドネを収穫時にポジティブセレクション。より高品質でスペシャルな葡萄を厳選、

新樽で発酵、熟成させています。(メルロもです)

エノログ古屋さんは「ベストのシャルドネを使ってます・・・」

とのお言葉の後に

「でも厚みのあるワインのためのベストな葡萄という意味で・・・ベストってあいまいで

すね」と。

それだけ、全ての葡萄がベストな状態を目指しているし、それぞれの製品にとってベスト

の意味合いは違うということでしょうね。

リザーブのシャルドネは新樽を使うので、やはり、その樽の強さに負けない原料葡萄のポ

テンシャルが必要。パワーがあります。

カリフォルニアやブルゴーニュのシャルドネの持つゴージャスさとは違い、優しく素朴な

ものの、複雑なアロマ。バターやヴァニラの香りと、リンゴやパイナップルのようなフレ

ーバー。バランスよくまとまっています。

安心院葡萄酒工房では昔から実に様々な葡萄を栽培していて

さらにそれらを交配して新しい可能性を持つ品種の模索にもつとめていらっしゃいます。

シャルドネを極めるというよりは、安心院の葡萄に特化した様々な可能性を実際にいろい

ろとやってみて、広げていらっしゃいます。

2014年のソーヴィニヨン・ブランは青リンゴやカボス(大分なので・・・)レモングラス

を感じる爽やかな香りと、ミネラルのニュアンス。豊かな酸味が口に広がる秀作でしたし

これからボトリングされるというアルバリーニョも、ふとスペインを思い出すようなフレ

ッシュハーブやグレープフルーツに海の香りが穏やかながら、時間が経ってもへこたれず

素晴らしいできばえとなっています。

試飲コーナーでは、ブランデーも大人気のようで、食前から食後まで安心院のワインで完

結できるような多様性をめざしていらっしゃるんだなと感じました

最後に

忘れられないのが「小公子」

安心院ワイン小公子ラベル

小公子は山葡萄系の品種を交配させて作られた葡萄品種なんですが

現在秋田県と島根、そしてこちら安心院葡萄酒工房のものが有名です

東北と島根のものは結構ピラジン香のような独特な香が強く、野性味あふれる、いかにも

「山葡萄です」というワインなんですけども、この安心院のものは爽やかな酸味に溶け込

んだ渋みと豊かな果実味がボディをつくって実にまろやかなんですね。

温暖な九州ならではの味わい・・・と簡単に考えていましたが

そうではありませんでした。

この小公子は皮が非常に薄くて破れやすい。

青臭い香りが出ないように、完熟を待っていると、想定外の雨や台風で皮が破れて葡萄が

傷んでしまいます。

2014年は気温差が大きな一年で、葡萄に酸がのり、ソーヴィニヨンブランなどは非常にエ

レガントで豊かな酸と多彩な香りがいい結果を残していますが、小公子は台風にやられて

収穫が五分の一に落ちてしまったそうです。

「台風の被害を受ける前に収穫しよう」

「でもせっかくここまで完璧な状態なのに、もう少し待ちたい」と、ぎりぎりの選択をし

たそう。

収穫のとき、手の上で皮が破けて手が赤く染まる小公子に写真をみせていただき・・・

ちょっと、いえ、かなり胸が熱くなりました。

そこに単なる焼酎メーカーのワイン部門ではない、ワインつくりのプロの悔しさや妥協の

なさを見ました。

5分の1に減ってしまった収穫で生まれてきた、完熟小公子なんです。

大分県は一村一品運動発祥の地。

県内各市町村で特色有る名産品が存在するバラエティにとんだ県です。

安心院ワインも特産品の何に合うというよりは、どんなお料理にも合わせられる多様性有

るラインナップを持っています。

この記事を書いた人

伊藤治美
伊藤治美
福岡市のとある会員制レストランに勤務。
ホテルでバーテンダーとして勤務した後ブルゴーニュへ留学。
そこで出会った人達とのご縁をきっかけにして
人とワインを繋げる橋渡しになりたいと日々奮闘中です。

2006年 アリアンスフランセーズブルゴーニュ留学
2006年 JSAソムリエ資格取得
2008年 第一子出産
2010年 第二子出産
2011年 CPAチーズプロフェッショナル資格取得
2012年 JSAシニアソムリエ資格取得
2013年 ベネンシアドールアフィシオナド資格取得
2014年 公式ベネンシアドール資格取得

ソムリエ、チーズプロフェッショナル
ベネンシアドール各試験対策を含む
個人のワインとチーズのサロンNOTESを主宰しています。
NOTES

どうぞよろしくお願いいたします。
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伊藤治美

伊藤治美

福岡市のとある会員制レストランに勤務。
ホテルでバーテンダーとして勤務した後ブルゴーニュへ留学。
そこで出会った人達とのご縁をきっかけにして
人とワインを繋げる橋渡しになりたいと日々奮闘中です。

2006年 アリアンスフランセーズブルゴーニュ留学
2006年 JSAソムリエ資格取得
2008年 第一子出産
2010年 第二子出産
2011年 CPAチーズプロフェッショナル資格取得
2012年 JSAシニアソムリエ資格取得
2013年 ベネンシアドールアフィシオナド資格取得
2014年 公式ベネンシアドール資格取得

ソムリエ、チーズプロフェッショナル
ベネンシアドール各試験対策を含む
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