最近の”日本ワイン”、飲んでいますか?

2017-06-02 9 26 44

 

皆さんは、普段から”日本のワイン”を飲んでいるでしょうか?
正直なところ、本場のフランス・イタリアのワインやコストパフォーマンスに優れたチリ、オーストラリアやニュージーランドのワインが主流であり、まだまだ日本のワインというのは選択肢としては下位に甘んじている所があると思われます。しかしながら、量販店やコンビニで気軽に買える大量生産されている日本のワインは、その多くが海外から輸入されたブドウジュースを醸造して作った、いわゆる「日本ワイン”もどき”」(失礼)です。そういうワインとは別に、ブドウ作りから一貫して国内で作られた日本のワインをしっかりと飲んだ事があるでしょうか?
実は、最近の日本産ワインは舌の肥えた欧米のワイン愛好家も納得する出来になっているのです。今日はそんな日本のワインのお話と、その中でも特に盛り上がりを見せている北海道のワイン事情も紹介してみようと思います。

 

 

権威のあるコンクールで受賞を遂げた日本のワイン

店を眺めると「◯◯にて金賞受賞!」なんてポップを良く目にすると思います。
お酒に限らずとも、皆さんが一度は見聞きした事がある「モンドセレクション受賞」という肩書きは日本国内でも数多くの商品に記載されています。実際の所、金賞ばかりで権威は無いという声もあり、実際に申請したら8割は金賞になると言われたりもします。あえて解説はしませんが、然程権威のある賞では無い様子。

ただ、肩書きが大好きな日本人にとっては「何も知らないけれど金賞なんだから、きっと凄い商品なんだ」というイメージが先行して売上向上にも繋がる、という事で重宝されています。商売上は致し方無いのですが・・実際に権威のあるコンクールでは日本のワインというのは、どの様に評価されているのでしょうか。

 

 

デキャンター・ワールド・ワイン・アワード(DWWA)という、イギリスのワイン雑誌「デキャンター」が開催するコンクールがあります。審査員には世界最優秀ソムリエのジェラール・バッセ氏や、ワインのスペシャリスト”マスターオブワイン”、”マスターソムリエ”といった有資格者などが名前を連ねます。おそらく世界中に数あるワインコンクールの中で最も権威のあるコンクールでしょう。
昨年そのコンクールにおいて、山梨県の中央葡萄酒株式会社が造る「Grace Extra Brut2011」「Grace Koshu Private Reserve2015」が、参加数約16000種類の中からプラチナ賞(金賞・銀賞・銅賞を選出し、金賞の中でも優れた物に授与される)と、ベストアジア賞を受賞するという快挙を成し遂げたというニュースがありました。

特にスパークリングワイン部門では、ヴーヴ・クリコを始めとする有名所が名前を連ねる難関部門なので、アジアのスパークリングワインが受賞するのはもちろん初めてであり、世界を驚かせました。特筆すべきは、前者の「Grace Extra Brut2011」は欧州品種でもあるシャルドネを使用したスパークリングワインであった事です。甲州種であれば、そりゃあもう日本のブドウですから日本で良いワインが作れるのが当たり前ですが、おもいっきり欧州品種であるシャルドネを使った日本のワインが世界のワインと勝負して勝てたというのは、もっともっと評価されて良いはずです。

分かりやすく例えるなら、オリンピックの陸上男子100mで日本人選手が並居る強豪を抑えてメダルを獲得した、といった所でしょうか(分かりやすくないかも・・・)。

 

 

日本のブドウ作り技術が進化している?

 

十数年前の日本のワイン作りは「欧州に追い付け、追い越せ」をスローガンに掲げ(?)日本の気候に合った日本の品種を中心に、また一部では気候にそぐわない欧州品種を用いてワイン作りを行っていました。もちろん、品質もそれなりに良くて美味しいワインもありましたが、欧州の一流ワインを劣化コピーしたに過ぎない部分もあり、恥ずかしながら自分も美味しいとは思っていませんでした。しかし、「そんな欧州をライバル視していてはダメだ」「日本の日本らしいワインを作ろう」という流れが生まれてきます。

きっかけとなった出来事は何なのかは判りませんが、沖縄サミットや北海道・洞爺湖サミットといった世界中の国賓を招いた晩餐会で提供された”日本のワイン”が国内外のワインファンに興味を持たれた事なども1つの要因かもしれません。もちろん、すべての生産者にいえる事ではなく、最初から欧州なんて意識していない生産者も沢山居ましたが、国内のワイン生産はその潮流に乗って、とにかく「品質の良いブドウ作り」に舵を切り始めました。こうなってくると、技術大国でもあり努力を惜しまない日本人らしいワイン作りの文化が発展します。

 

各々の生産者は、自分たちのテロワールに合ったブドウ品種を選択し始めます。積極的な機械導入もしつつ、手作業が適している部分は手作業と、繊細な感性を持つ日本人らしい丁寧なブドウ作りが浸透しました。欧州と違って雨量が多い日本列島では、水捌けを重視した畑作りにも積極的に取り組みました。そうやって先進的な技術や技能を導入しながら、そのテロワールにあったブドウ品種を選択できる様になりました。以前であれば、生食用に適さないブドウをワインに加工する事もあった日本のワインは、ワインを作る為だけに作られたブドウでワインを作る、という当たり前の姿に進化しました。また近年の生産者は各々の哲学を有しており、そのワイン造りにおける情熱はここでは語り切れません。

 

 

同じ日本でも気候は大きく違うので・・・

 

最近でこそ、日本のワインは欧州品種、甲州やマスカット・ベーリーAといったワイン用ブドウ品種を用いる様になりましたが、一昔前では、まだまだ生食様のブドウを用いたワインが多かったと思います。ジュースみたいでワインっぽく無い、という理由でワイン愛好家からは敬遠されがちだったとも言われています。(逆にワインに馴染みの無い人には好評だったとか・・・)

長野県塩尻市の桔梗ヶ原地区。標高700mの丘陵扇状地でブドウを作るに適した場所ですが、今は日本のメルローといえば桔梗ヶ原という程に有名な場所になりました。
かつてこの地区ではコンコード、ナイアガラといった生食用、あるいは甘味果実酒に加工する為のブドウが作られていましたが、消費量が減ってきた為に1976年、ワイン醸造用のメルロ種を栽培する事を始めました。何の保証も根拠も無い中での挑戦だったとの事。その先見の眼に狂いは有りませんでした。(シャトーメルシャンHPを参照)

 

日本のワイン産地として山梨県や長野県は早くから日本のワイン作りを牽引してきましたが、遠く北の方。北海道のワイン、ブドウ作りは大きく異なります。
本来、北海道と本州の間にある津軽海峡を境として北と南で動植物の生態は大きく異なっていました。イギリスの動物学者でもあるトマス・ブラキストン氏の名前をとって”ブラキストン線”と呼ばれています。ゴキブリが北海道に住んでいない、とか北海道はヒグマだけど、本州はツキノワグマ、といった具合に生物を見ても大きな違いが存在します。植物、特にここではブドウに着目してみると、北海道では昔からドイツ系品種を多く育てて来ました。本州と違って平均気温に大きな差がある北海道だからこそ、寒冷地向けの品種を導入する事が多かったからと言われています。

近年は平均気温が上昇の傾向にある事やブドウ作りの技術が進歩した事も重なり、ピノ・ノワールなどのフランス系品種がどんどん生産量を増やしています。寒さで害虫が少なく、梅雨の影響も少ない北海道の気候で健全なブドウを作る事が出来るというメリットをブドウ造りに活かしています。最近の北海道産ピノ・ノワールは高評価で、本場フランスの生産者も北海道に進出してピノ・ノワールとシャルドネを生産しようと着目しています。

そして、かつて栃木県足利市のココ・ファームワイナリーで手腕を発揮したブルース・ガットラブ氏や曽我貴彦氏を筆頭に、全国各地から北海道に移り住んでワイン作りをしている生産者が多く存在し、更にそこで研修を積んだ生産者が新たな土地でブドウを作り始める、といった好循環が生まれており、これからの日本ワインの中心は北海道になりそうな予感もします。

 

 

 

一昔前の日本酒も「美味しくない」「無駄に甘ったるい」などと言われた時期がありました。戦後の米不足などが影響して、質より量を考えた「三倍増醸酒」という物が普及し、そのイメージが定着していた為に最近まで日本酒を飲まなかったなんていう食わず嫌いならぬ、飲まず嫌いだった方も多いそうですが、国内での日本酒ブームにとどまらず、欧米における日本食ブームも手伝って、日本のSAKEは輸出産業としても成長しています。日本のワインも、ぜひそういった流れに追従していけたら良いな、と個人的には思っています。

ワイン愛好家の間でも「日本のワインなんて、まだまだ欧州の足下にも及ばない。」と豪語する方も居ますが、ぜひ、飲まず嫌いのまま終わらせるのではなく、進化した今の日本のワインを味わって欲しいと願います。

 

 

 

この記事を書いた人

海野豊
海野豊
・日本ソムリエ協会 ワインエキスパート
・北海道池田町 十勝ワインバイザー
・札幌商工会議所 北海道フードマイスター
・日本ソムリエ協会認定 ワイン検定 ブロンズクラス&シルバークラス 認定講師

「道産”食と酒”のサポーター」として活動中
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この記事の著者

海野豊

海野豊「道産”食と酒”のサポーター」

・日本ソムリエ協会 ワインエキスパート
・北海道池田町 十勝ワインバイザー
・札幌商工会議所 北海道フードマイスター
・日本ソムリエ協会認定 ワイン検定 ブロンズクラス&シルバークラス 認定講師

「道産”食と酒”のサポーター」として活動中

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